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nostalghia
velveljin
nostalghia
2011.09.16
CD
NBL-202
¥2000 (without tax)
1. straub
2. nostalghia
3. zerkalo
4. polt
5. xoanon
6. vogelfluglinie
7. schéma
8. nacelle
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浅沼優子氏によるアルバム解説:

 velveljinはyohei yamakadoとmana haraguchiが中心となり、流動的な編成で制作・ライブを行っているバンドである。京都で友人同士でセッションを重ねるうちに形成されていったプロジェクトだが、メンバーのyohei yamakadoが映像を学ぶためにパリへと渡ったことに伴い、現在はパリを拠点に活動している。音楽制作のみならず、個別にDJや映像制作といった異なるプロジェクトも進行中でマルチな表現活動を展開。その型に縛られない自由で柔軟な姿勢が、音にもよく表れている。

 「映画は思考に順じた芸術です。ひとつのコンセプトを体系的に表現したいと思ったときは映画を選びます。音楽はより感覚・身体的で、言葉では説明できない(あるいはしたくない)論理的な枠から逃げていってしまうものを表現するのに適しています。あくまでも個人的な見方ですが」とは本人たちの言葉。音楽を単体のものとしてではなく、その音楽が鳴る場所や場面を作り上げていく、あるいは演出していくようなアプローチで作られているのが分かる。

 その意味から、彼らの音楽はアトモスフェリックだといえるが、単なるBGM、「いい雰囲気」を彩るという類いのものではなく、もっと主張を持って感情に訴えかけて来る強さがある。このユニークさ故にジャンルに分類するのはとても難しいスタイルだ。アンビエント、ダブテクノ、IDM、エレクトロニカが混ざり合ったどこかに起点を見つけることが出来るが、生楽器やフィールド・レコーディングも取り入れたそのサウンドは、もっと有機的で人間的な響きを持っている。本人たちは、自らを「ロック的な要素を下敷きにしたバンド」と説明しているのも興味深い。事実、彼らが昨年2010年に自主制作で発表したファースト・アルバム『NONSAVOIR』は、ポップ路線のY.M.O.を思わせるヴォーカル曲やニュー・ウェーヴ、シューゲーザー・ロックと呼べるような曲まで盛り込んだ内容で、その音楽的表現力の幅広さに驚かされる。

 本作は、その『NONSAVOIR』に次ぐセカンド・アルバム。全編インストゥルメンタルだ。郷愁を意味する『nostalghia』と名付けられ、同題のアンドレイ・タルコフスキー映画『ノスタルジア』から着想を得ている。サウンドトラックとしてではなく、タイトルと映画そのものの世界観の印象を元に制作されている。タルコフスキーといえば圧倒的な映像美で詩的に物語を紡ぎ出し、観る者に解釈の自由を与える作風で知られるが、それと同じ作用を持った音楽作品だと言っていいだろう。緊張感のある美しさと、想像力を増幅させる細やかな効果音や環境音、そして控えめながら印象深い憂いのあるメロディが、立体的なサウンドスケープを築き上げている。そこには実験的な精神と共に一貫した美意識が感じられる。

 さらにアルバムの中盤から後半にかけては、よりビート主体のダンサブルな展開を見せる。「zerkalo」、「polt」、「vogelfluglinie」、「schéma」などは、ダンスフロアでもしっかり機能する造り。踊る/踊らせるということを意識して作ってはいないそうだが、「しかし現在の先端の音楽はクラブシーンで起こっていると思いますので、クラブミュージックは常に意識しています」とのこと。ここでは音楽の身体性を強調することにより、聴く者を傍観者から参加者に変える効果をもたらしている。一本の映画を見るというよりは、その登場人物になったような感覚をもたらしてくれるのだ。それがどんな物語なのかは、リスナー次第。

 さあ、想像力を高めて『nostalghia』の世界に足を踏み入れてみよう。そして自分の物語を探索してみよう。そこでまどろんでもいいし踊ってもいい。解釈は自由だ。


浅沼優子

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